香川県内企業・財団の取組

未利用・規格外に着目!オリジナル加工を施し魅力的な商品にすることで地域の農水産物の活性化を(共栄冷凍水産株式会社)

香川県内の元気な企業を訪問し、その企業が発展してきた過程と躍進を続ける今、そして未来への指針についてお聞きする「かがわ発!元気創出企業」。今回は、観音寺市にある「共栄冷凍水産株式会社」を訪ねました。

共栄冷凍水産株式会社の歴史は、1954年に先代社長が始めたイワシの煮干し(イリコ)の加工からスタートした。1972年には、イリコの原料を保管する冷凍保管業として会社を設立。同時に、利用されない小魚などを養殖用の餌として販売していた。2012年からは加工場を新設し、網元や漁協の協力を得て未利用や規格外の漁業資源、特にカタクチイワシ(脂イワシ)を活用した食品加工業をスタート。現在は、カタクチイワシだけでなく地元で捕れる小魚や未利用魚を活用した商品開発に取り組み、自社で買付、保管、加工、販売を一貫して行っている。冷凍保管業とともに企業の一翼を担うようになったオリジナル商品の開発販売を中心に、藤村社長にお話を伺った。

マイワシはオーソドックスなオイル漬けに。小ぶりのカタクチイワシやママカリはピリッと辛口に。それぞれに特長があり、ワインやビールにもピッタリ

「伊吹イリコ」の加工・保管が瀬戸内産の小魚を扱う原点

観音寺沖に浮かぶ伊吹島周辺は、良質なイリコとなるカタクチイワシの産地として有名。骨や身の柔らかい良質のカタクチイワシを水揚げし、加工されたイリコは讃岐うどんのダシに欠かせない素材であるのはもちろんのこと、現在では「伊吹ブランド」として全国的にもメジャーな存在になってきている。
三豊・観音寺地域が冷凍食品の一大生産基地として発展する中で、共栄冷凍水産株式会社は冷凍倉庫業として近隣の冷凍食品会社の原料や、全国へ出荷する製品を保管し、流通の拠点となっていた。また、会社設立当初は、冷凍食品会社の原料の確保から凍結・保管を手伝うこともあった。
「網元が水揚げした魚を買い付けるので、冷凍庫の横でイワシ漁の網にかかる他の小魚を選別し、それぞれ凍結して、加工用素材にするお手伝いをしていました」という藤村さんが、目をつけたのが、近年になって増えてきた、脂が多すぎて良質なイリコにならないイワシ(脂イワシ)だった。「イリコの原料にならないことから美味しいのに漁獲されない脂イワシをどうにか活用できないだろうか?」と考えた藤村さんは、伊吹島をはじめとする地元の網元、漁協に協力をお願いし、脂イワシ漁に出てもらい買付けすることができた。この脂イワシの付加価値を高めた商品化や小魚の有効活用を目指して新事業を手がけることにした。

魚を有効活用するための新事業 さまざまなサポートで新たな道を

2012年の秋、冷凍倉庫の横に新加工場を竣工。大手冷凍食品企業や地元の給食センター、食材卸業者に素材としての「冷凍カタクチイワシ」や「唐揚げ用打粉付」を販売するとともに、自社商品の開発にも着手した。イワシを使った餃子や煮付けなどの加工品を産直市場向けにつくり、販売することにしたが今ひとつ。どうすればいいかと考えていたタイミングで「平成25年度かがわ中小企業応援ファンド事業」の採択を受け、密封包装ができる機械を導入するとともに産学官連携による新商品開発が行えるようになった。
こうして誕生したのが「さぬきオイルサーディン」だ。外国産の缶詰というイメージが強いオイルサーディンをあえて瀬戸内海産のイワシのみでつくることに。ビニールに入ったレトルトタイプは長期常温保存もできることから、お土産として使ってもらいやすい。レシピはもちろんパッケージデザインなどにもこだわった商品は、県内外のアンテナショップやオンラインショップでも販売され、外国向けのお土産としても注目されている。また、一つひとつ手作業で加工する体制を活かして、骨まで丸ごと食べられるような加工を施した「骨まるごとシリーズ」は、地元の給食にはもちろん、大手スーパーや惣菜店、レストランからも高く評価されている。

鮮度抜群の小魚を良質のオリーブオイルに漬けた香川県らしい逸品(写真は伊吹島産マイワシ)

発想の源は「もったいない!」未利用の素材を価値ある商品に

「私達の地域には、そのままでは使えない、売れないと思われている素材はたくさんある。加工することで付加価値をつけるのが私たちの役目」と話す藤村さん。規格外や未利用の農水産物を活用することはフードロス問題を解決する一つの手段になるはずと意欲を見せる。現在、開発に取り組んでいるお魚のハンバーグシリーズでは、伊吹島のイワシはもちろん、県産ハマチとブロッコリー、ワカメも混ぜ込む。「このあたりはブロッコリーの全国有数の産地でもあるんです。以前、ブロッコリーを出荷する際に茎の部分をカットするのを知って、茎の部分をどうにかできないかなと思っていた」と話す藤村さん。長年取引のある学校給食の現場の「子どもたちはハンバーグが大好き。栄養価の高いお魚を使ったハンバーグがあれば、魚食を取り入れやすい」という声を聞いてハンバーグやナゲットを開発するにあたって、未利用のブロッコリーやワカメの茎を合わせてはと考え、試作を重ねては改良に励み、販売をスタートしたところだ。
常にアンテナを張り、ひらめきを形にしてきたが、長年、地元に根ざしてきたからできたものばかりだという。「漁師や漁協、生産者の協力あってこそ。これからもつながりを大切にし、ともに成長し発展していければ」と藤村さんは微笑んだ。

カタクチイワシは骨ごとミンチにしているから、カルシウムなどの栄養がしっかり摂れる
代表取締役社長 藤村 昭夫 氏

共栄冷凍水産株式会社

会社概要

所在地 観音寺市三本松町三丁目4-13
電話 0875-25-0539
URL https://www.facebook.com/IRIKOkyouei/?locale=ja_JP