香川県内企業・財団の取組

小学校入学前に身に付けておきたいことが楽しく学べる、みるみるわかる!みるみる伸びる! 「視覚学習みるみるカード」を開発(はなはなみかん合同会社)

世界中のこどもから「学びのおいてきぼり」をなくしたいと「視覚学習みるみるメソッド」の教材である「視覚学習みるみるカード」などの教育用サポートツールを開発して注目されているのが、2021年に久保みどりさんが創業した『はなはなみかん合同会社』である。

子どもたちの中には、コミュニケーションをとることが苦手で自分の思いをうまく伝えられないために理解されなかったり、誤解されてしまったりする子どもがいる。そのような子どもは、現在の教育現場では対応が難しい子どもとして「おいてきぼり」にされがちである。

しかし、ほんの少しだけ対応方法を工夫したり、その子の側に立ったコミュニケーション方法を取り入れたりするだけで、意思疎通がスムーズに行えるようになり、笑顔で対応できるようになったりする。

久保さんは、子どもたち一人一人に寄り添いながら、その多様な個性を伸ばしていってほしいとの思いを持ち、子どもたちのコミュニケーションを支援するための教育用サポートツールの開発に日々取り組んでいる。

自らの経験を基に「視覚学習みるみるメソッド」を開発

「視覚学習みるみるメソッド」とは、言語・数・形などの学びたいことと、視覚・聴覚や体を動かすことを組み合わせて、記憶を定着させる学習方法である。色をはじめとする視覚支援とハンドサインを使って、コミュニケーションしながら、子どもの言葉の理解を促す。また、身につけておきたい言葉や行動などを、楽しい動画や音源に合わせることによっても学ぶことができるようにしている。

視覚支援

視覚から入る情報は、物や事象そのものを瞬時にイメージでき、言葉よりずっとわかりやすい情報源である。 絵や写真、文字などの視覚情報を使うことは、目で見て理解し、行動できるようにするために有効である。

ハンドサイン等

発達の段階では言葉より先に手が発達する。このため、言葉でコミュニケーションが難しい場合、簡単なハンドサイン等を使うことで言葉で伝えられない欲求を理解してもらえるようになる。

現在、人間の感覚は視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感が広く知られている。しかしこれ以外にも運動感覚、平衡感覚、内臓感覚等の感覚がある。最近注目されてきたのが「共感覚」である。共感覚とは単語や数字に対して「色」を感じたり、音や音階に対して「色」や「形」が見えたり、連想したりすること。通常は成長にともなって神経の分化が進み、いずれ消失してしまう。しかし成長後も、一部の感覚が未分化なために、数字や言葉や音などに、色を感じることがあり、「共感覚」を持つ人となる。

久保さん自身が「共感覚」を持っていて、幼児期・学童期には数字に「色」が付いて見えており、住所を見て数字がきれいな色の並びだと素敵なおうちだと思ったり、友達の電話番号や車のナンバーを一度見たら記憶できたりしていた。高校生の頃には共感覚が薄れていったことで簡単には記憶できなくなっていた。自身の経験から「感覚」と「学習」は密接につながっているということに気づいたことが、「視覚学習みるみるメソッド」の開発につながっている。

感覚(色・音・サイン・動作)と学習(かず・ことば・てんき・きもち)を組み合わせる
視覚学習みるみるメソッドの特徴
視覚学習みるみるメソッド活用組合せ例

また、2011年から運営してきた親子教室で試行錯誤を重ねながら手作りの教材を作ってきたこともメソッド開発のベースとなっている。

2016年には、それまで暮らしていた東京都から香川県に移住。見知らぬ地での起業準備のため、専門家相談を活用し始める。

そして、2017年に財団の「起業等スタートアップ支援事業」を活用して、個人事業主として起業し、「視覚学習みるみるメソッド」の開発に本格的に取り組むようになり、教材「視覚学習みるみるカード」の見本を制作した。 その後、2018年に独創的なビジネスプランを対象とした財団主催の「かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ」に応募したところ、1次・2次・最終審査と勝ち進み、「視覚学習みるみるメソッド」を全国に広めていくプランで見事に優秀賞を受賞した。その後も月に一度のペースで専門家相談を継続し、商標登録の申請や契約書作成などについて支援を受けながら、「視覚学習みるみるメソッド」の開発を進めた。

教育機関の監修を経て、「視覚学習みるみるカード」を発売!

「視覚学習みるみるメソッド」を広く教育現場に普及・定着させていくためには、教育的ツールとしての価値を高め、内容の更なる拡充を図る必要があると考え、2020年から2021年にかけて「商品化技術テーマ調査事業」を活用し、香川大学教育学部の坂井・宮﨑研究室の監修・治験、及び香川県立聾学校の手話監修のもと、メソッドの有効性の検証や効果的な導入方法などについて1年間の共同研究を行った。

また、共同研究の中で、実践研究として実際の幼稚園・保育園、小学校、特別支援学校などで使っていただき、多くの先生方からの意見やアドバイスを反映して、より教育効果が高まる内容とした。

このように内容の拡充を図った結果、ついに2022年に「視覚学習みるみるカード」の発売にこぎつけ、子どもたちのコミュニケーションを促進する有効な支援ツールとして、全国の幼稚園・保育園、小学校、特別支援学校などに広まっていっている。

みるみるカードの活用ケース

【みるみるカードの特徴】
みるみるカードは、音声・色・体の動きなどの感覚と、数・ひらがななどの学習を組み合わせることで、子どもの言葉の理解を促す。

1.色で違いをわかりやすく記憶

色で違いをわかりやすく記憶
数字や文字などの視覚情報の色を変えることで、違いをわかりやすくしており、感覚的に覚えられる。

2.指文字やハンドサイン(手話)を使って、動作と合わせて記憶

指文字やハンドサイン
指文字やハンドサインも取り入れ、動きに関連させて覚えられる。

3.オリジナル動画や音楽と連携

音に合わせて楽しく学ぶことでコミュニケーションを促進することができ、記憶しやすくなる。

4.幼稚園・保育園、小学校、特別支援学校、家庭など、場所を問わず、どの子でも使うことができる。

幼児・親子教室に導入
幼稚園での毎日の掲示に活用
小学校のカウンセリングの活用
家庭で遊びながら学ぶ様子

人は、いつからでも、どこからでも、何にでも挑戦できる!

久保さんは今、香川大学大学院創発科学研究科で学ぶ社会人大学院生である。

社会人2年目の頃に大学院を受験したことがあったが、仕事との両立は無理だと判断し、大学院には行かなかった。このことがずっと心に残っており、20年近く潜めていた想いがやっと叶った。やりたい研究があり、大学院でしっかり学び、その学びをさらに、「視覚学習みるみるメソッド」へ活かしていきたいと考えている。 主婦からの起業、そして大学院に挑戦。人は、いつからでも、どこからでも、何にでも挑戦できると、久保さんは語る。

代表 久保みどり氏

はなはなみかん合同会社

会社概要

所在地 高松市サンポート2-1高松シンボルタワー4・5階
URL https://hana-mikan.com/
従業員数 1名