香川県内企業・財団の取組

讃岐うどん製造の省エネルギー化と作業環境の改善を一度に実現する(光和電機株式会社)

設計・加工技術を活かした自社製品の開発

光和電機株式会社は、工場の産業用機械や環境関連設備などの制御盤を製造している企業。既製の部品の組み立てだけではなく、板金設計から、ハードとソフト両面をカバーできる電機設計、板金加工、粉体塗装、配線組立、現地調整まで、自社で一貫して行える体制を整えている。一から製造する以外にも、板金や電機改造のみといった一部分だけの注文まで、クライアント毎に異なる幅広いニーズに対し、柔軟に対応できることが大きな強みとなっている。一度オーダーを受けた取引先からの継続注文が多いことからも、同社の信頼度の高さを伺うことができる。

業績は堅調に推移しているものの、主たる製品は顧客先の機械設備を制御する機器の一部であったり、請負がメインであるため、かねてから自社オリジナルの製品を開発したいという思いを強く持っていた。そんな折、きっかけとなったのは、ある知人からの提案だった。

提案されたのは「電気式のうどん茹麺機」の開発。香川県内にはうどん店や製麺所が約600軒あるが、そこで使われている茹麺機の多くはガス式。うどんを茹でるために強い火力が必要なことから大量のガスを消費しており、燃料代の経費に占める割合がかなり大きい。加えて茹麺機の発する熱により厨房は高温となり、夏場は調理担当者が熱中症になるなど作業環境も良いとは言えず、その改善が課題となっていた。

提案された電気式茹麺機は、燃料代と環境改善の両面を一度に解決できる可能性を秘めたものだった。これまで同様の機械を製作した実績は無く、全く畑違いの分野ではあったが、制御システムの設計やステンレス鋼加工のノウハウを有しており、茹槽の製作以外は全て自社開発が可能だった。また、提案をしてくれた知人が食品機械業界に詳しく、うどん茹麺機の開発に実績のある人だったこともあり、業界の改善に期待ができる製品を開発できれば、そこからの需要も見込めると判断し、開発に着手することを決定した。

高熱量と省エネを同時に実現するカーボンヒーター

熱源に採用したのは「カーボンヒーター」。このヒーターの最大のメリットは熱効率の高さだ。その数値はなんと80%以上。ガス釜が良くて60%だから、驚くべき数値だ。完成した茹麺機「エレかま」の電気代と、ガス釜を比較すると、約30%の経費削減が見込まれる。一般的なガス釜の初期投資が約50万円なのに対し、「70リットル」仕様の「エレかま」は約150万円と高額にはなるが、トータルコストとしては約5年で同額になる計算だ。(計算は開発当時の想定)

カーボンヒーターを採用した電気式茹麺機は、過去に他社が製造していたものがあったが、その製品はヒーターが茹槽の底に配置されていたため、非常に清掃しにくいというデメリットがあった。これを踏まえて、「エレかま」ではヒーターを茹槽の下面に配置したため、槽内の清掃は非常に容易になった。熱効率も槽内配置と遜色なく、フィラメント温度が最大1,100℃になるカーボンヒーターは、ガス釜と比較しても非常に早く水を沸騰させることが可能だ。電気式なので、出力を段階的に調整することも容易で、一定の温度を保つこともできる。

うどんを茹でる場合、生麺をお湯に入れた時に下がった温度を短時間で沸騰状態まで戻すことが求められるが、「エレかま」ではこの問題を解決。湯が対流しないとうどんの茹で上がりにムラが出るが、ヒーターを中央ではなくやや端寄りに配置することで、槽内のうどんのスムーズな対流も実現している。ヒーターは交換が簡単にできるユニット式を採用した。これにより前面扉を開けるだけで、ヒーター1本10分程度で交換作業が可能。メンテナンス性の良さは、故障時に迅速な対応ができると導入を検討するクライアントの安心にもつながっている。

さらに茹槽やヒーターを断熱材で覆うことで、機器周辺への放射熱を遮断。厨房の作業環境改善に大きく貢献する。うどんを茹でている時でも、機器の表面は触っても火傷しない程度の温度に保たれている。また熱源を断熱材で覆うことで、熱効率も改善している。

うどん店と共にさらに高みに

完成した「エレかま」は、実際に一般うどん店で導入された。当初は厨房の温度が予想よりも高かったため、機器内の温度が上がり過ぎてオーバーヒートするというトラブルもあったが、これは開放された熱がこもりにくい場所で試験を行っていた結果、閉所での使用に対応しきれていなかったためだった。問題点は速やかに改善され、その後は全くトラブルなく使用されている。このことからも分かるように、実際に使用するうどん店からのフィードバックは欠かせない。

同社が異分野へ参入したことはもちろん、電気を使ってうどんを茹でるという新しい機器であるため、メーカー側にも、うどん店側にもノウハウの蓄積は十分であるとは言いがたい。当面は、より多方面への機器のPRと並行し、うどん店へのテスト使用や技術協力も視野に入れていきたいとのこと。世界情勢の不安定化で燃料費の高騰にうどん店が悲鳴を上げている昨今、「エレかま」がそれを打開する強い味方になり得ることは間違いないはずだ。

商品にかける熱き想い

自社の技術で社会に貢献できないかという想いが以前よりあったのですが、ようやくそれが実現できそうです。SDGsへの対応という面からも、非常に意義がある製品ではないでしょうか。コロナにより打撃を受けているうどん店の助けになればうれしいです。

代表取締役 千馬 弘幹 氏

光和電機株式会社

会社概要

香川工場
所在地高松市香川町川内原1632-4(香川工場)
電話087-879-6161
URLhttps://www.kowa-denki.co.jp/
従業員数23名
資本金1,500万円