“さぬきキウイっこ”と共にブランド力を高めたい
キウイフルーツ専門の農業者、キウイベリージャパンは、平成26年に香川県と国立大学法人香川大学が新たに開発した、キウイフルーツ品種「さぬきキウイっこ」を試験栽培時から手がけてきた。さぬきキウイっこは、1個40~60g。ブドウの房のように実がなり、一般的なキウイフルーツの約半分という小さなサイズと、皮の表面のザラザラとした毛がないのが特徴。そのため、手で半分に割ってそのまま指で押し出して食べられる手軽さがウリだ。先行する香川のオリジナルキウイフルーツ「香緑」や「さぬきゴールド」などに続く、県オリジナル品種として、県内外に積極的に売り込みをしている。規格は15~20gのSサイズから100g近い大きなサイズ(7L)まで9階級あるため、サイズ的な規格外品はほとんどない。しかし「傷がついたり、樹上で軟化するなど、品質的な規格外品がどうしても数%出てしまう」と島田満沖社長。それを有効活用できないかと考えていたところ、財団の担当者の紹介で出会ったのが、高松市で洋菓子店「パティスリー・スミダ」を営むスミダ・リ・オリジンの住田俊二社長だった。
「実は以前に、別の方からキウイフルーツの加工品試作を相談された際、手作業で皮をむく下処理にかなり手間がかかるので、冷凍庫に入れたままにしてしまったことがあったんです」(住田社長)。ところがその“少々面倒”という思いが意外な展開に結びついた。「いざ、作業をしようと凍ったキウイフルーツの皮をむこうとしたら、ナイフを使うまでもなく、皮はいとも簡単にツルリとむけたんです」。同じ手作業の皮むきでも、ナイフを使ってむくのと、手で押し出しただけでツルリとむけるのとでは作業効率が格段に違う。偶然、作業性のよさに気づいたことから「さぬきキウイっこの加工品も喜んでやらせてもらいました」(住田社長)。
また、パティスリー・スミダは、住田社長が小麦アレルギーがあることから、小麦粉を使わない「グルテンフリーのお菓子屋」を看板に掲げている。そこで、その付加価値に加え「さぬきキウイっこ使用」という、ブランド力の発信にもつながる商品を開発した。さぬきキウイっこはフリーズドライ後に粉末にして、“ダックワーズ”というアーモンドの粉末とメレンゲ生地を合わせた焼き菓子の間にサンドする、クリームの中にふんだんに使った。菓子の名前は「さぬきキウイっこダックワーズ」。キウイフルーツらしい甘酸っぱさが印象的だ。平成31年1月には商品として完成しており、県内のマルシェやイベントなどで限定販売を試みていた。冷凍果実でも生果と同様にフリーズドライが作れることがわかり、量産化と販売促進に力を入れたいと考え、農商工連携事業の「販売力強化・ブランド化支援事業」を活用して販路を広げていくことにした。
パッケージ改良と積極的な販促
前述のとおり「さぬきキウイっこダックワーズ」の大きな特徴はふたつ。ひとつはさぬきキウイっこを使用している点。もうひとつは、小麦粉を使わないグルテンフリーの小麦アレルギー対応スイーツである点だ。本格的に販売網を拡大するにあたっては、これらの特徴をきちんと伝えるリーフレットやホームページの作成、また、贈答用パッケージ(箱)が必要だった。
その製作作業と並行して、スミダ・リ・オリジン側では、さぬきマルシェなどの県内イベントをはじめ、スーパーマーケット・トレードショーやFOODEX JAPAN(いずれも千葉・幕張)など、県外の食の見本市に出展し、国内外の顧客の獲得に努めた。「グルテンフリーを掲げていると、アレルギー対応菓子を探しているこだわり店のバイヤーや、海外の方からの関心が高かった」と、住田社長。その2大見本市での商談数は約78件。そのうち成立が2件、11件が今も商談継続中で、現在は新たに作ったパッケージでサンプル提供をしているところだ。
見本市で得られた顧客とは別に、既存の取引先にも積極的な販促営業を実施した。現在は、東京を中心に展開する日本百貨店の4店舗をはじめ、東京表参道のカフェでも取り扱いが検討されている。
また、キウイベリージャパンでも百貨店や専門店のフルーツ売り場へキウイフルーツの売込みを行う際に、手土産としてこのダックワーズを持ち込んでいる。「うちのキウイフルーツを使っているということで印象に残るし、大変喜ばれています」と島田社長。連携体として取り組むことで、これまでの菓子ルート以外にも販路拡大が期待できる点が、この事業を活用する大きなメリットでもある。
協力体制でさらに販路を拡大する
「商品としてのレベルアップやホームページの開設ができたので、これからはどんどん売り上げを伸ばしていきたい」と住田社長。事業活用前は、単に袋に入っただけのバラ売り菓子だったが、新たに専用包装フィルムを作り、4個入り、16個入りの専用化粧箱や商品リーフレットの作成をしたことで、しっかり販促営業ができる体制が整った。事業期間の1年間に、スミダ・リ・オリジンが販促営業のために出向いたイベントや見本市は10以上。「消費者動向をつかんだり、バイヤーにお伝えする機会は十分いただけました。あとはしっかり契約に結び付けられるよう、ご縁をつないでいきたいです」。キウイベリージャパンの島田社長も、原材料供給にとどまることなく「青果の商談からも取り扱い商品に発展するよう、うちも積極的に働きかけていきたいと思います」と語る。農商工連携事業として取り組んだことで、双方で販路を築く、新たな展開がこれまで以上に期待できるようになった。
農商工連携事業に取り組んでみて
これまでもいろいろな県産素材でお菓子を作ってきました。香川のキウイフルーツはオリジナル品種がいろいろあるので後の展開も楽しみです。
スミダ・リ・オリジン 代表取締役社長 住田 俊二 氏(写真 右)
過去にもジャムやジュースなど他社に加工品素材として素材提供はしていました。農商工連携で共に売上げを伸ばすという新たなチャレンジができ、良かったです。
キウイベリージャパン 代表取締役社長 島田 満沖 氏(写真 左)
※「さぬきキウイっこ」は香川県と国立大学法人香川大学の登録商標です
株式会社スミダ・リ・オリジン
会社概要
所在地 | 高松市東山崎町184-13 |
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電話 | 087-840-7363 |
URL | https://www.patisseriesumida.org |
従業員数 | 9名 |
資本金 | 3,000千円 |
株式会社キウイベリージャパン
会社概要
所在地 | 善通寺市吉原町3128-2 |
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電話 | >0877-63-9111 |
従業員数 | 15名 |
資本金 | 10,000千円 |