香川県内企業・財団の取組

世界最高レベルの高機能タンパク質で医薬品業界に貢献(プロテノバ株式会社)

研究開発型ベンチャー企業が10年がかりで築いた土台

「起業した当初は、香川県から世界へ打って出る、と主張して笑われたものです」と振り返る、代表取締役社長の真島英司さん。薬学の博士号を持ち、製薬会社での新薬開発などに携わっていたが、自らがオーナーとして研究開発に従事したいという思いから平成17年にプロテノバ株式会社を設立。希少糖をはじめ糖質研究が盛んで、支援体制も充実している香川県を拠点に選び、抗体医薬の製造に使われるタンパク質の開発に取り組んできた。

抗体医薬は、特定の物質にだけ結合する「抗体」の特性を応用した医薬品。正常な細胞には作用しないため副作用が少なく、抗がん剤などへの活用を見込んで開発を進めている製薬会社は世界的に多い。しかし、製造コストが高く治療費も高額になることが課題であることから、機能性の高いタンパク質の開発は、製造の効率化につながる大きなテーマである。

タンパク質は、鎖状に連なった20種のアミノ酸の並び方を換えたり、より強いアミノ酸に換えることで、機能を高めることができる。起業した頃はあまり注目されていなかった『Protein A』というタンパク質を構造改変で付加価値の高いものにする、というのが同社の長期的な目標だった。

とはいえ研究開発には長い時間と労力がかかる。多くのベンチャー企業がぶつかるという「死の谷」に、真島社長も直面した。当初は赤字が続いて半年売り上げゼロも経験、ようやく黒字に乗ったのは起業して5年目のこと。「ビジネスには波があって、そこにうまく乗れた強運もあるでしょう。何よりファンド助成金の支援に助けられたからこそ乗り切れた苦境でした」と真島社長。ちょうど遺伝子への注目が高まっていた時期でもあり、バイオマーカー探索や構造解析、高感度解析など同社のノウハウを活かせる受託サービス事業も請け負って、中長期型と短期型、二本柱の事業で初期の土台を固めていった。

高機能性タンパク質で同業他社を一歩リード

従来の「Protein A」の弱点は「アルカリ耐久性が低い」こと。そこで同社は、独自技術を用いて抗体結合量を高め、アルカリ耐久性や分解抵抗性を向上させた抗体結合タンパク質「Protein A-R28」を開発した。このタンパク質は、ニーズの高い分野であり、同業他社も少なくない中で、極めて結合特性に優れるという強みがあった。実用化が進めば、抗体医薬の製造コスト低減に大きく貢献できると考えられていた。

さらに、その機能性を最大限に引き出してくれる大手化学メーカーの樹脂に出会い、両社の技術をベースに高い結合能とアルカリ耐久性を追求した「rProtein A樹脂」が誕生した。しかし、平成20年に売り出したが、保守的な医薬業界では、なかなか市場に浸透せず苦労したという真島社長。「面白い、いけるはずだと思った商品がヒットするとは限りません。市場に出してみるまで反応はわかりませんし、何より新商品の評価が出るまでに時間がかかる業界ですから、ものづくりに対しては常に冷静ですね。実際、『rProtein A樹脂』の改良型となる『Protein A-R40』を平成23年度にファンド助成金を活用し、平成25年に売り出すと、少しずつ流れが変わって、平成28年後半から市場の反応がグッとよくなってきました」。世界中で採用されて人気も上昇、本来の目標だった研究開発分野で、やっとビジネスとして実を結んだと手応えを感じている。

体制強化で広がる可能性

平成29年からは設備投資に力を入れ、これまで外注製造だった工程を自社製造に切り替えて、品質の安定・向上に努める方針。「医薬品は、同じものを同じクオリティで継続出荷できることを重視します。特に大手がひしめく中に切り込む我々のようなベンチャー企業は、製造能力の安定が不可欠です。製造の難しさを痛感する毎日ですが、ベンチャー企業だから無理、と諦めるのではなく、『ものをつくれるベンチャー企業』を目指したい。そのために、今後は管理力も視野に入れた組織の安定と強化、人材育成にも注力するつもりです」と真島社長。求めているのは、営業力よりマーケティング力、市場のニーズを的確に読み、研究者であると同時に「外」に仕掛けていける人材だ。

もちろん商品開発にも余念がない。平成27年度からファンド助成金を活用して、世界最高レベルにある「ProteinA-R40」の機能性・安定性をさらに超える期待の新商品の開発や低分子化抗体の精製を実現した「Protein L」など、さまざまな高機能商品を打ち出す予定である。「抗体医薬品業界は10兆円規模と言われ、ネタ切れどころかまだまだ成長途上です。いろんな可能性が眠っていますから、どんどん新しいことに挑戦していきたいですね」。研究開発にかける熱い思いと、ビジネスマンとしての冷静な視点が、同社の原動力と言えそうだ。

新商品にかける熱き想い!

私は常に、私たちの仕事は世の中に必要か、社会に貢献しているかを自問し続けてきました。医薬品生産効率の向上は、より安全な医薬品を世に出すお手伝い。お客さまが求めるものを形にし、香川県から世界に打って出る、というビジョンは今も揺るぎません!

代表取締役社長 真島 英司 氏

プロテノバ株式会社

会社概要

所在地 東かがわ市西村1488-1
電話 0879-49-0702
URL http://www.protenova.com/
従業員数 6名
資本金 1,450万円
採択年度 平成27・28年度