香川県内企業・財団の取組

起業わずか1年で小型無人機による水難救助システムを開発(株式会社空撮技研)

小学校時代からの空に対する憧れと空撮技術による災害救助の実現に向けて起業を決意

小型無人機を使用した空撮を手掛ける(株)空撮技研の代表者の合田氏は、平成26年11月に同社を設立したが、起業に至るきっかけは小学校時代から始まる。

当時から空を飛ぶ鳥はどんな風景が見えるのだろうかと思いを巡らせ、社会人となってからでも、この思いは途絶えることはなく、ラジコンや飛行機にのめり込んでいった。勤務の傍ら、平成5年には産業無人ヘリコプター認定資格を取得して、農薬散布の産業無人ヘリコプターの運用を地元ヘリクラブで始め、さらに、勤務先の業務では、300箇所の溜池改修や古墳発掘調査を行う前の航空写真をラジコンヘリコプターで撮影してきた。

このような実績から、ラジコンヘリコプターを使った航空写真の県内第一人者ともいうべき合田氏の空撮スキルは、県内最大の美術公募展である香川県美術展覧会で知事賞(第72回、平成19年開催)を受賞するほど高い評価を得るまでに達していた。

小学校当時から空に対する憧れを抱き続け、思いの実現に向けて行動してきた合田氏だったが、集中豪雨、洪水、土砂災害などの災害時に、上空からの救助や状況確認、物資供給に空撮技術を活用させたいという新しい思いも加わった。

そこで、32年間勤めた会社を50歳の時に早期退職して、培ってきた空撮技術を駆使したマルチコプターの活用による航空写真・動画撮影事業や防災事業を開始した。設立した翌月には、香川県よろず支援拠点に紹介してもらった香川大学社会連携・知的財産センターや同大学危機管理研究センターと連携して、早速、マルチコプターによる防災デモンストレーションを行ったところ、多くの報道陣が取材に訪れ、注目を集めた。また、財団が主催する革新的ベンチャー企業を表彰する「かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ2014」に起業後わずか3ヶ月ながら優秀賞に輝き、経営展開を本格化させていった。

▲ドローンスパイダー “DS-001PRO”
▲ドローンスパイダー “DS-003PRO”

着脱式アタッチメントとドローンスパイダーを開発

特に、今回の事業では、水難救助への活用に向けたマルチコプターの①アタッチメント開発と②巻き取り装置の開発にそれぞれ取り組んだ。

①マルチコプターのアタッチメント開発
災害時に、1台のマルチコプターに救命胴衣やロープ、物資など複数の防災用品を搭載できれば救命・救助の範囲や用途は大きく広がる。しかし、これまでは、搭載物の切り替えの不便さ・時間ロスに加えて、搭載物の重量制限とバランスなどの障害があった。そこで、香川高等専門学校詫間キャンパスと共同研究を行い、着脱機能を備えたアタッチメントを開発して、スムーズな切り替えを実現させた。

②巻き取り装置の開発
また、水難救助の精度を高めるため、マルチコプター暴走の防止対策が必要であった。そこで、4号テグス(かなり太目で強度の高い糸)を小型モータで巻き取る装置(商品名:ドローンスパイダー)をマルチコプターに搭載したタイプと地上から巻き取るタイプの2種類を開発した。開発当初は、糸が弛んで正常に動作しなかったが、装置にマイクロコンピュータを組み込む工夫を行い、一定の張力を維持することを可能とした。

販売と並行して操縦者の養成も必要

合田氏は、「マルチコプターの水難救助システムの開発を通して、社会の関心度が非常に高いことがよくわかりました」と取り組みを振り返った。今後は、マルチコプターに装備する防災機器のラインナップを充実させ、自治体向けにPRを進めていく予定であった。

しかし、販売・納品すれば終了ではない。「購入者の操縦技術が不安です。正確に操縦できる人材は周囲にほとんどいないと思います」と合田氏は非常に危惧している。手軽であるため、操縦者が機体の特性を熟知しないまま扱うと落下などの事故が起きる。そこで、販売展開と並行して、操縦トレーニングの講習も積極的に展開して、操縦者の育成や安全性の啓発活動も行っている。

起業当時は、合田氏1名であったが、現在は、社員も3名となった。さらに、平成29年4月からは、新たに地元の学校を卒業した2名が入社予定であり、今後のさらなる成長が期待される。

新商品にかける熱き想い!!

GPSでの自動操縦はまだ安心できない「ドローン」。
未熟なままでの操縦は、個人にとってもドローン業界にとっても悲劇を生みます。
「ドローンスパイダー」について、何でもご相談ください。

代表取締役 合田 豊 氏

株式会社空撮技研

会社概要

所在地 観音寺市大野原町5316-1
電話 0875-54-2600
URL http://www.multicopter.co.jp
従業員数 3名
資本金 300万円
採択年度 平成27年度