香川県内企業・財団の取組

自社の技術で地域に明るい光を省エネで高照度の照明反射板の開発に成功(株式会社広立)

新事業のきっかけは社員のアイデアから

平成元年、土木建設業として創業した(株)広立。平成18年に看板部門を設立し、基礎工事からデザイン、設計、製作、施工までをワンストップで行っている。

看板製作において欠かせないのが照明である。東日本大震災以降、節電意識が高まる中、体育館や陸上競技場、イベント用の照明などは、消費電力が大きな問題となっていた。近年は省エネ効果の高いLEDが普及してきたものの、大型看板や高天井照明では照度(明るさ)や重量の面で問題がある。さらに、体育館や野外競技場の照明は、特にプロスポーツや公式競技で使用する場合、照明の基準が明確に定められており、また、まぶしすぎるという問題もありLEDへの移行は困難であった。

省エネでより明るく、また基準を満足する照明ができないかと模索していたところ、現場社員から「反射板の材質を鏡のようなものに替えたら明るくならないか」というアイデアが寄せられ、それがきっかけとなり、高照度を生み出す新たな照明用反射板の開発に乗り出すことになった。

ローコスト&ハイパフォーマンスの技術開発

体育館などの照明で求められるのは、低電力で高照度であることに加え、さらに均斉度の高さが求められる。均斉度とは明るさのばらつきのことで、最低照度÷最高照度で求められ、この値が1.0であれば、ばらつきがないことを示す。この数値にも規定があり、例えばバレーボールの公式競技では、会場照明の均斉度は、JIS規格で0.5以上と定められている。

これらの条件を満たすことができる反射板の研究に試行錯誤を重ねていたところ、形状を曲面ではなく多角形にすることで、微妙な角度の違いで光の反射効率が変わり、明るさが変化することに気がついた。そこで、産業技術総合研究所四国センターにも協力を求めて本格的に研究を重ね、最も光を効率よく反射させる多段式の構造を見出した。

途中、多面体の角数と折り曲げ段数により照射強さに法則性のあることが判明したため、形状の異なる反射板を組み合わせて取り付けることで、均斉度を飛躍的に向上させることが可能になった。開発に携わった取締役副社長の瀬尾尊さんは「最初はすべて手書きで図面を書き起こしたので、時間もかかって苦労しました」と当時を振り返っている。

最初に試作品を導入した香川県立体育館では、1,000Wの照明を400Wに変更したが、反射板の効果で照度は10%ほど上がった。さらに、均斉度も約1.4倍に向上し、台数削減にもつながった。その後、善通寺自衛隊体育館や丸亀市土器川体育館など香川県内の施設を中心に設置し、いずれも約半分の電力量で従来以上の照度と均斉度を実現させることができた。

このような取り組み実績と優れた技術が評価され、平成25年に三豊市ものづくり大賞、27年には芦原科学奨励賞をそれぞれ受賞した。さらに27年に特許も取得している。

中小企業ならではのスピードで新たな挑戦

LEDも低コストで照度が高い商品が開発され、高さ20m以下の照明ではほとんど差がなくなっている。今後は20m以上の高さが必要なグラウンドやごみ処理施設をターゲットにして販路を広げていくと同時に、LED照明についてもメーカーと共同で強い光で遠くまで照らすことのできる商品の開発を進めている。

新商品にかける熱き想い

高照度の照明反射板を開発することができたのは、社員全員のおかげです。今では県外の施設からも依頼が増えてきています。
中小企業ならではのアイデアでチャレンジしていきたいですね。

代表取締役 松本 義一氏



株式会社広立

会社概要

所在地 三豊市豊中町笠田笠岡3185-6
電話 0875-62-2898
URL https://koritsugroup.com/
従業員数 19名
資本金 10,000千円
採択年度 平成25年度