伝統技術を生かし、新しい分野にチャレンジ
明治31年(1898年)に刃物製造業として創業し、100年以上の歴史を持つ(株)大矢根利器製作所は、スーパーのレジやチケット発券機用などんのカッターユニット分野で世界シェア80%以上を誇る。
刃物一筋でお客様のニーズに応えてきた会社に15年前からお付き合いのある知人から、「シュレッダー屑をより細かく切断することで紙粉にできないか」と相談が寄せられた。それは、環境に配慮した土木工事の新工法として近年注目されている「軟弱土再生資源化工法(MGS工法)」に用いる資材として、今まで焼却処分されていたシュレッダー屑をミクロン単位(1,000分の1ミリ)まで粉砕して用いようというものであった。
紙を「切る」から「すりつぶす」イメージへ
軟弱土を再生資源にするには、原材料である紙粉を200ミクロンというこれまでにないサイズにまで微細化する必要があった。一口にシュレッダー屑と言っても、そのサイズや紙の種類も多岐にわたっており、実現は容易ではない。
今までの「刃物で切る」という方法では、求められている品質の紙粉にはならない。砂古さんは、「切るのではなく石臼のように紙をすりつぶすイメージではどうか」と発想を転換し、今まで培ってきたノウハウを駆使して、粉砕刃の材質、形状などの改良を何度も行い、要求される紙粉への粉砕能力と十分な耐久性を有する刃を開発した。
今回開発した製造機は、一度ではミクロン単位まで粉砕できないため、作業は二工程で行う。第一段階ではファンシュレッダーで荒粉砕し、第二段階で仕上げ粉砕を行う。
試作1号機では、毎分5gの紙粉しか粉砕できず採算が合わなかったが、粉砕機だけでなく、紙粉の投入装置や回収装置も含めてあらゆる改良を行い、毎分2kgまで生産量を向上することができた。
製造機の販路開拓と紙粉の大量生産へ
今回開発した製品は、既に東京都板橋区の古紙回収業者に納入され、稼働している。MGS工法の優位性をゼネコンやセメントなどの関連業者や古紙回収業者、紙粉製造業者に理解してもらい、各都道府県に設置する計画も浮上している。
紙粉の価格が下がっていく中にあって、生産性のさらなる向上が至上命題でもある。砂古さんは、「現在の処理能力は、まだ低い。毎分4kg生産できるように能力を上げていきたい」とさらなる進化を目指している。
新商品にかける熱き想い
紙粉を200ミクロンまで微細化することは本当に難しく、刃の開発は苦労しました。試作機で何回も試し、何とかお客さまの満足いく品質を達成しました。
今後は生産性を上げて、日本全国にこの製造機を普及させていければと願っています。
株式会社 大矢根利器製作所
会社概要
所在地 | 三豊市仁尾町仁尾丁396 |
---|---|
電話 | 0875-82-3101 |
URL | https://www.oyaneriki.co.jp/ |
従業員数 | 126名 |
資本金 | 60,000千円 |
採択年度 | 平成26年度 |