コスト削減、作業者の負担軽減のために自動化
(株)村上製作所は昭和21年に創業した産業機器部品の専門メーカー。現在の主力商品は建設機械部品の一つである「油圧シリンダー」で、売り上げの約7割を占めている。
油圧シリンダーの製造において、パッキンの組み込みは、作業の複雑さや品質確保の観点から手作業で行われており、時間と手間を要する工程であった。一方、安価な中国製や韓国製部品が市場に出回っている中、納品先である建設機械メーカーからのコスト削減要求も厳しく、同社にとって至上命題となっていた。
こうした中、生産本部生産部次長の内海章次さんは「製造を海外に移して人件費を下げることもできるが、それでは将来、技術が流出し、地域の雇用も失われてしまう」と危惧していた。
国内での製造を継続する方針で、コスト削減を模索していたとき、香川県産業技術センター主催のロボット技術分科会に参加し、そこで行われていた「パッキン挿入法」に関する研究活動を目にする。それをヒントにパッキンを組み込み作業にロボットを導入して自動化してはどうかと思いつき、同センターの協力も得ながらシステムの開発に取組むこととなった。
自動化はコスト面以外の効果も大きい。この作業は手先の疲労が激しく、腱鞘炎などの職業病を引き起こすこともある過酷なものであるが、作業者の負担軽減につながる。また、組み込み間違いなどの人為的ミスを防ぎ、品質の安定化も期待できる。
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2台のロボットを駆使して「組み込み作業」を再現
今回のシステムを開発するにあたり、①ピストン自動供給装置、②固定・旋回装置、③パッキン自動供給装置、④監視装置、⑤組み込み作業用ハンドのハード面とロボットプログラムのソフト面といった5つの開発を行った。(図1参照)
組み込み作業用ハンドの本体は既製の産業用ロボット2台を用い、ピストンを「固定旋回装置」にセットするロボットとそのピストンにパッキンをセットするロボットが連携して動作する。双腕ロボットも検討したが、コストが倍以上かかるため、2台で対応することにした。
さらに、組み込みの際にごむ製のパッキンを一旦伸ばして本体にはめ込むという複雑な動きをロボットでどのように再現させるかという課題については、さまざまな方法を試みた結果、組み込み用ハンドの先端に棒状の金属を取り付け、ピストンとパッキンの間に差し込み回転させて取り付けるという独自の方法を考案した。
同社ではこれまで溶接用ロボットのプログラムを作成した経験はあったが、今回は初めて使用するメーカーのロボットで、2台を連携させるプログラミングが必要であり、内海さんは「人間の動きをロボット2台にティーチングさせて、タイミングを合わせることに苦労しました」と振り返る。
また、パッキンの表裏取り付け間違いを未然に防止するための、判別センサーも取り付け、不良品を100%自動検出できる機能も備えている。
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社内でのシステム展開、社外販売を視野に
現在は油圧シリンダーのピストン3種類のパッキン組み込み作業を自動化しており、フル稼働で月に3,000個まで生産できるようになった。連続して作業ができるロボットは生産性と品質にムラがなく、作業員の負担も軽減できた。今後もより生産能力を高めて行きたいと考えている。
ロボットは、ダイニングテーブルほどのサイズで非常にコンパクト、移動も簡単にできる。ハンド部分の形状を変更することで、セル生産システムとして他の部品の組み込み作業も自動化が可能になり、将来は商品化も視野に入れている。内海さんは「まずは社内のさまざまな工程で導入してみて、必要な改良を加えながら実績を積み上げ、精度をもっと高める必要がある」と先を見据えながらも目の前の課題をしっかり捉えている。
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新商品にかける熱き想い
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パッキンの自動組み込みシステムは他社にはないものです。市場は限られていますが、コスト削減だけでなく作業員の負担軽減にもなりました。このシステムを生かして「人にやさしい職場」をつくっていきたいと思います。
株式会社村上製作所
会社概要
所在地 | 高松市新田町甲297-1 |
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電話 | 087-841-4181 |
URL | https://www.murakamiss.co.jp |
従業員数 | 195名 |
資本金 | 40,000千円 |
採択年度 | 平成26年度 |