ふとした思いつきから始まった母校の校舎活用事業
東かがわ市引田は、昭和3年に世界で初めてハマチの海面養殖に成功した「ハマチ養殖発祥の地」。少年時代をこの地で過ごした(株)cavic代表取締役社長の板坂直樹さんは「ハマチ養殖は地域の誇りです。天皇陛下も養殖場を御覧になりました」と胸を張る。
平成21年、廃校となっていた旧大川東高校跡地に、板坂さんの母校の引田中学校が移転整備されることになる。市が移転後の施設の有効活用を公募していることを耳にし、故郷のために何かできないかと考えていたところ、中学時代に水泳部で汗を流したプールのことを思い出す。
そこで、プールも使って引田らしいことはないかと更に思いをめぐらせていると、チョウザメを養殖してキャビアを生産してはどうかというアイデアが「不意い降ってきた」という。
体育館が巨大な養殖場に
最初に養殖場に考えていた思い出の50mプールは、老朽化や必要な水の確保、更に、屋外なので稚魚を狙う野鳥への対応が難しく、残念ながら利用を断念した。そこで目をつけたのがプールに隣接した体育館。「屋内であれば生育環境も安定するし、鳥に襲われる心配もない」と板坂さんは考えた。
体育館の中に水槽を設置することに決め、必要な水は敷地内にあった非常用井戸から調達。井戸は十分な水量を湧出しており、掛け流しで利用できたことから、ろ過循環での養殖に比べてチョウザメの肉質やキャビアの品質向上にもつながった。
当初は井戸水に含まれる高濃度の鉄分が問題になったり、水槽内に赤潮が発生して苦労もしたが、地元漁師さんの助言もあり何とか克服。平成26年、ついに「東かがわ・つばさキャビアセンター」として稼働を開始した。
事業は順調に進んでおり平成27年のキャビア生産量は約600kgの見込み。現在は購入した成魚から採取しているが、ゆくゆくは施設内で稚魚から育成したチョウザメから採取したいと考えている。ただし、キャビアがとれるまでには7~8年かかるといわれており、実現はもう少し先になるようだ。
チョウザメは3年目までは雌雄混合で育て、4年目に雌雄を判別する。同社では産卵しないオスも「キャビアフィッシュ」として商品化しているが、売上の99%はやはりキャビアだという。
キャビアの商品価値を決める要素の1つに色がある。そのため、価値が高く、市場で好まれるグリーングレーやシルバーに光る卵を選別して出荷している。将来的に大量生産が可能になれば、キャビアを色別にランク分けして、幅広い用途に使ってもらいたいと考えている。
夢は日本一のキャビア会社!
「本来、世界三大珍味に数えられるキャビアとは、塩漬けではなく生キャビアなんですよ」と板坂さん。塩分が10%以上含有される塩蔵輸入品に比べ、生キャビアは3%未満、プチプチした食感ではなく、クリーミーでスッととろけるのが本来の姿なのだとか。味のクオリティはフランスの食文化に精通したシェフに監修を依頼し、本場と同じ味わいを目指している。塩の種類や加減、熟成期間で味が大きく変わるため、板坂さんはシーズン中に毎朝チェックを欠かさない。
販売戦略は「高いブランド力で勝負」という方針で、高級百貨店や一流レストランを中心に売り込んでおり、海外からも問い合わせが絶えないという。
県内では同社が経営するレストラン「林の散歩」で提供しているほか、平成28年6月には銀座にキャビアbarをオープンさせる予定。また、東かがわ市のふるさと納税のお礼品としても採用され、知名度は着実に向上している。
「廃校舎利用が話題になり販路拡大につながりました。先日の国産キャビアの輸出解禁を受けて、これからはメイドインジャパンで海外にも積極的に売り込みます。そのためには更に設備を充実して生産拡大を図りたいですね」と意気込む。「夢は日本一のキャビア会社!」という板坂さんの挑戦は続く。
新商品にかける熱き想い
やりたいことを形にするには資本力が欠かせません。本格的に動くにあたり、財団の支援があったのは幸いでした。継続的な支援体制があれば、もっといろんなアイデアが形になるのではないでしょうか。
株式会社cavic
会社概要
所在地 | 高松市香西東町547-3 |
---|---|
電話 | 087-897-3113 |
URL | https://www.cavic.jp |
従業員数 | 4名 |
資本金 | 100千円 |
採択年度 | 平成26年度 |