提案型集団としての成長には人材育成が不可欠
1961年、通信・計測機器販売事業からスタートし、現在は高圧受電設備や配電盤、制御盤などの電気設計製造を手掛ける。代表取締役の池田晃さんは「平成16年の高潮被害の復旧であちこちの現場を奔走した時、当社の仕事はインフラを支えていて、社会にとって大事なんだとあらためて実感したんです」と振り返る。「責任が大きいだけに、それを自覚し自分で考え、自分で責任を持つ集団でなくてはならないと思っています」。
高いコミュニケーション力や柔軟な発想力を持つ提案型技術者集団を目指す同社の「生産性向上プログラム」は、工程管理とともに「人を育てる」ことにも重点を置いたものだ。「私は、人があってこそIoTがありAIがあると考えます。これまで経済産業省のIT経営実践企業に2度認定されましたが、ITはあくまで道具。人間が主役という内容なんです」と池田さん。
池田さん自身も技術者で、社内のコンピューター化を積極的に進めてきたが、ある時現場に足を運び「今日は残業あるか」と問いかけたところ「わかりません」と答えが返ってきたことに驚いたという。受け身の集団では会社として成長できないばかりか、新たな受注生産スタイルの確立を目指す上でも大きなウイークポイントとなる。「そこから、人を育てることに力を入れ始めました。かつては背中を見て盗めと言われた技術の世界だが『教えてくれたらやる』という姿勢の若者が増え、ギャップに悩んだこともありましたが、そこで気づかされたのもやはり『人を育てる』重要性でしたね」と力を込める。
ミーティングでさまざまな課題に挑む
工程管理と人材育成の両立の第一歩として、毎日のボード前ミーティングと部門の枠を超えたコミュニケーションを徹底。顧客優先の営業と実際のものづくりを担当する現場とは、これまで対話も少なく意見が相容れないことも多かったという。「目の前の課題をみんなで話し合って解決することに意味があるんです」と池田さん。
まずはホワイトボードに工程を書き出し、営業・設計・工場担当全員が課題の共有と意見交換を行うところからスタート。コミュニケーションだけでなく「必ず結論を出す」ことを重視し、仮説を立てて効率化を考えるミーティングの基本的な流れを確立して、さまざまなテーマの下でチームをつくり実践を重ねてきた。当初は1枚のホワイトボード上で1日分の工程すら回しかねたが、現在は月工程全体を管理できるまでに成長している。
「以前は工程がパンクすると『社長、どうしましょう』だったのが、最近はほとんど呼ばれないんです。自分で考えて責任を持って進めているということでしょうね」と語る池田さん自身、以前に比べると「仕事を周囲に任せていくようになった」と変化を実感している様子。
コンサルタントの助言の下、社内研修を行ったり、県外へ企業見学に訪れたりと刺激を受けつつ、見学先の企業が直面しているテーマについて独自にディスカッションをするなど、課題解決力をより高める訓練も行ってきた。池田さんは「コンサルに任せっきりではダメ。考え方を学び、一緒にやっていくことが大事です。ほめられたり、かなりきついことも言われたりしますが、人と人の対話という点でさまざまな要素を学ぶことができますよ。そうして鍛えてくれるコンサルに巡り合えたことで、大いに参考になりました」と手応えを語る。
こうした課題解決力向上の取り組みがベースとなって、従来は外注していた工程の一部を自社で手掛けられる体制をつくり効率化を進めるなど、実際に生産性が向上したり、新たな進捗が見られたりしたテーマも数多い。顧客の要求に応えるスタイルから「自ら提案し、工程をコントロールしていく」スタイルへの移行を支える成長と言えるだろう。人材が育ち、管理・メンテナンスのレベルも向上してきた。
チャレンジを楽しみながら成長したい
管理本部管理課長の岩﨑伸さんは、畑違いの業界から飛び込んで6年目。入社直後に比べると、社内は大きく変わったと感じている。「もともと雰囲気のよさに惹かれて入社しましたが、部門間のコミュニケーションが増えて業務がより円滑になりました。取り組みが始まった当初の議事録を今になって見ると、当時は当時なりに一生懸命だったものの『レベルが低かったな』と思いますね。それだけ私たちも成長したということでしょうし、社内コミュニケーションの強化を通じて社長の思いや物の見方を共有する機会にもなっています」。
コロナ禍をはじめ環境問題、協力業者の減少など、業界を取り巻く課題も多いが、「課題を苦にせず、課題が見つかる、まだ伸びしろがあると考えるようになれたら、さらにステップアップできるはず」と池田さん。「要するに、ゴールはないんですよ。まだまだだとは思いますが、その方がいい。『やらされる』ではなく『自分からやる』姿勢で、楽しみながらチャレンジしていく中に成長があるんです」と展望を語った。
取組にかける熱き想い
財団の支援のお陰で、コンサルタントのような外部の知識を活用することができ、社員も少しずつ成長しています。社員のレベルが高いと、社長もいいかげんなことを言えない緊張感があります。私も必ず社員の立場で考えて、相手の伝えたいことを真剣に聞き、こちらもどう言えば伝わるかをより深く検討するようになりました。
一光電機株式会社
会社概要
所在地 | 高松市香南町由佐2082 |
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電話 | 087-898-1125 |
URL | https://www.ikko-e.co.jp |
従業員数 | 86名 |
資本金 | 4,000万円 |