香川県内企業・財団の取組

新開発!!高い抗酸化作用がある小麦粉[ぎゅっとポリフェ・プラス]が誕生(吉原食糧株式会社)

ポリフェノール3倍の高機能小麦粉[ぎゅっとポリフェ・プラス]

県内の小麦生産量は、昭和40年代から外国産に押されて急速減少。さぬきうどん用小麦粉も大部分はオーストラリア産で占められるようになった。

平成5年、「もう一度県産小麦でさぬきうどんを」と、県の農業試験場などが中心となり、新たなうどん用小麦の開発に着手し、その後8年を経た平成13年、関係者の努力で新品種「さぬきの夢2000」が誕生した。

明治35年以来、製粉業を営む吉原食糧(株)もプロジェクトに参加。開発の様子はNHKの「プロジェクトX」でも紹介され、番組の中では同社の取り組みも全国に放映されている。

その後も同社は「さぬきの夢2000」を使った小麦粉の研究や普及に尽力し、平成20年には「さぬきうどん用ハイブリット小麦粉”讃岐プレミアム”」等を開発。県内の多くのうどん屋や製麺業者で利用が広がっている。

一方、同社は最近の消費者の健康志向の高まりを受け、小麦が持つ機能性にも着目。平成23年4月県産業技術センターと共同で「さぬきの夢2000」を原料に、抗酸化作用が高く、ポリフェノールを豊富に含む小麦粉「ぎゅっとポリフェ」を開発した。

「ぎゅっとポリフェ」は明確なコンセプトで他と差別化を図った商品として、食品産業新聞社の食品産業技術功労賞を受賞。

同社では、レシピ集の発刊や、試食会の開催などをとおしてさまざまな利用の可能性を積極的に提案し、更なる普及を図った。

同社の吉原社長は、「国内で初めて小麦ポリフェノールに着目した商品だったので、当時注目を集めました」と振り返る。

その後、県では「さぬきの夢2000」を改良して製粉性等を高めた「さぬきの夢2009」を開発。平成25年には生産を全面的に切り替えることとなった。

品種が異なれば、製粉特性やポリフェノール含有量が高い部位も異なることが予想される。

そこで、ファンド事業を活用して「さぬきの夢2009」に最適な製粉方法で、さらに機能性を高めた小麦粉の開発に取り組むこととした。

▲「ぎゅっとポリフェ・プラス」で製粉した小麦粉
▲焼き上がりの色、食感、食味、経時変化などを官能評価で確認。クレープも焼き菓子もよい総合評価を得た
▲[ぎゅっとポリフェ・プラス]400g 290円
注)デザインは「ぎゅっとポリフェ」(旧製品)

おいしさと機能性のバランスを求めて試行錯誤した配合調整

同社は県産業技術センターと共同で、小麦の胚乳各部位、小麦ふすまの配合割合・粒子径等を詳細に分析するとともに粉砕方法等も検討。

今回は、数多くの成分を一斉分析し、特定の現象と関連する成分を特定できる最新技術「メタボローム解析技術」を応用して研究を進めた。

その中でアミノ酸の一種「トリプトファン」という物質にビタミンCの約6倍の抗酸化能があることが判明。早速、小麦中のトリプトファンの分布を調べた結果、小麦胚芽に豊富に含まれることを突き止めた。

小麦は大きく分けて「胚乳」、「表皮(ふすま)」、「胚芽」の3部位からできており、一般的な小麦粉の製粉では「表皮」、「胚芽」は取り除かれ、「胚乳」を製粉して作られる。

そこで、製粉工程で胚芽を抽出し、胚乳と混ぜ合わせてはどうかと考えたが、そのままでは胚芽に苦みがあるので、どうしても食味が悪くなる。

「いくら健康に良いとわかっていても、味が悪ければ食べてもらえません。おいしく感じるような胚芽の抽出方法や胚乳との混合調整にとても苦労しました」(吉原社長)。

「おいしさ」と「高い抗酸化作用」の両立を求めて研究を重ねた結果、ようやく目指していたなめらかな口当たりと、もちもちとした歯ごたえに、小麦粉ならではの香りや甘みを兼ね備えた[ぎゅっとポリフェ・プラス]が完成。

機能性の面でも一般の小麦粉に比べて抗酸化能は約3倍、ビタミンEは約7倍、食物繊維は約2倍と高い成果が得られた。

▲製粉の状態を研究用の機器を駆使してデータで確認する

食生活を健康的に変える一翼に

[ぎゅっとポリフェ・プラス]にはさまざまな用途が考えられ、例えば小麦粉自体にも甘みがあることから、砂糖を控えたヘルシーなお菓子の材料としても期待される。

日本人の死因の多くはがんや生活習慣病。消費者の健康に対する関心はますます高まりを見せており、今後もこうした商品に対する需要は増えてくると思われる。

これからの中小企業にとっても、従来の価格競争だけでなく、同社のように市場のニーズを的確に反映した高い付加価値を持つ商品づくりが求められている。

▲独自の粉砕技術を導入した製粉機
▲小麦粉を使った菓子やパンなど加工品の仕上がりを研究室のオーブンで確認する

新商品にかける熱き想い

従来輸入小麦は真っ白な小麦粉を作るのが主流でしたが、今後は独自のアイデアを大切にして、時代が求める新しい価値の商品づくりをしていくのが私たちの役割だと思います。大手ではできない商品づくりで小麦粉の可能性を広げていきたいですね。

代表取締役社長 吉原 良一氏

吉原食糧株式会社

会社概要

所在地 坂出市林田町4285-152
電話 0877-47-2030
URL https://www.flour-net.com
従業員数 30名
資本金 40,000千円
採択年度 平成24年度~平成25年度